2008年11月8日土曜日

新聞社―破綻したビジネスモデル

河内孝 (著)
価格:¥735(税込)
ページ数:220ページ
出版社:新潮社
発売日:2007/3/20

【評価】★★★☆☆

【読みやすさ】読みやすい

【概要】元毎日新聞社幹部が語る新聞社の実態と未来について

【備忘録】
新聞社は、部数至上主義に陥っている

売上・コスト
・新聞協会加盟112社
・販売店売上1兆7700億円
・配達手数料6500億円
・販売促進費1500億円
・販売経費40~50%以上
・販売店21000店
・折り込みチラシ売上4800億円
・5000万世帯・600万事業所
・駅やコンビニ即売売上700億円
・出版・事業売上3700億円
・広告売上1兆円
・広告代理店手数料2500億円
・90年代以降3(広告):7(販売)
・専売配達網・戸別配達はコストがかかるが世界に例を見ない巨大部数の「生命維持装置」

発行部数の減少
・日本の人口減少
・新聞を読まない層の増加
・30代以下は新聞を読まない
・首都圏の単身者の増加
・回収袋のリサイクルが面倒

閲読時間の減少
・朝刊平日:23.9分
・朝刊休日:25.3分
・夕刊:6.7分

インターネットの普及
・閲覧時間:37分
・世帯普及率:88%
・企業普及率:98%

メディア別情報収集先「何によってニュースを得るか」
・テレビ:79%
・インターネット:58%
・新聞:56%
・その他の目的別ではインターネットがトップを独占

人口が減少に転じ、世帯層頭打ち。30代以下の多くは新聞を読まない。
携帯電話の普及により自分の望む時間と場所で最新のニュースが得られる。
フリーペーパーの人気の向上。新聞広告収入の激減。

広告売上は30年前の水準
・「広告が取れない」というよりは「広告がよそに引っ越してしまった」
・部数に広告売上が比例しない
・広告の人件費と制作コストの増加

新聞各社の経常利益率
・読売:5.68%
・朝日:3.90%
・日経:10.69%
・毎日:0.3%
・産経:2.06%

消費税が8%になった場合の追加負担
・読売:108億
・朝日:90億
・日経:38億
・毎日:42億
・産経:22億
各社利益の大半が吹っ飛ぶか、赤字に陥るため新聞協会では、「新聞の社会的公益性」から税率を現行水準にとどめる軽減税率を求める方針。認められたとしても原材料費や輸送費、新聞製作、流通にかかわるすべてのコストが3%上がることは避けられず上記の数値には含まれず。

新聞の再販制度
・通常の商品の価格はマーケットの需要と供給の関係、つまり小売サイドで決定される。メーカーは「希望価格」を掲示することが出来ても、指定すれば独禁法違反。新聞と書籍雑誌などの著作物は例外が認められている数少ない商品で、メーカーが価格を決定し、地域による価格差もつけないようにしている。

発行本社による販売店への押し紙行為
・注文部数を超えて供給、または自己が指定する部数を注文させること

搬入部数と実売部数の乖離がどのくらいあるのか、信頼に足る資料がない。
・広告主の不信

環境破壊
・読者のいない残紙のために毎年100万本単位の木が伐採されている

コストヘビーな新聞
・巨額の用紙購入費・何百億円もの印刷および関連機器、輸送トラックの燃料、配達コスト

マスメディア集中排除原則
・多様な言論を守り、一時業者が複数の放送局を支配することを避ける趣旨
・新聞事業、テレビ事業、ラジオ事業を同一事業者が所有することを原則的に禁止
 →全国で一つなら20%以上の株式となり、経営を支配できる
・一事業者が所有、経営できる放送局は一つまでと制限
 →支配している放送局と別地域では、他局の株も20%までいくつでも持てる
・複数の放送局に出資する場合は、地域をまたいで複数の放送局の場合は20%、同一地域の複数の局については10%を超える株式を保有することを禁止
 →同一地域の放送局でも、10%までならいくつでも持てる。
・「新聞は衰退するかもしれないが、当分はテレビで食える」
・「特定の事業者(新聞、放送局)が複数の放送局を支配することを許さない」方針そのものが空洞化
・国民の知らないところで言論の寡占化が着々と進んでいた
・「マスメディア集中排除原則は、言論が独占的に悪用される可能性があるから、集中排除しなければいけないという。テレビ界の現状は5系列。たとえばテレビ東京が私どもの株を、フジテレビがTBSの株を買い占めるのはまずい。しかし縦の系列、自分のネットワーク各社の経営を助けるために、大幅な株を持つことが、これから必要になるのではないか。個人的見解では、縦の系列である場合は、言論の統制とか独占というのは、あたらないという感じを持っている」(氏家日本テレビ社長)
・「放送による情報格差の解消を旗印に、地方の経済力を無視して、全国の多局化を進めた挙句、今度は合併も可という。自らの執政を棚上げして、規制緩和という一軒、大義名分のありそうな政策変更で、製作波乱を糊塗する総務省の狡猾さは許しがたい」
「総務省がテレビの一社一局方針をとる限り、品質上の多様な放送なんて実現しない。東京という豊かな市場で一社一局、経営は安定、新しい局が参入する心配もないから、競争は視聴率だけ。バラエティが数字を取るとなれば、みなバラエティ。野球といえば巨人戦。FCCを訪れたときに『日米の違いは、一局が24時間の中で多様性を詰め込もうとするか、多チャンネルの中に多様性を実現するかだ』」といわれて、上手いことを言うと思った。国土も広いが、何千ものFM局があって、右の局もあれば、左の局もある。宗教別、人種別のラジオ局もあるそして各局が個性を争う。だから視聴質競争ができる。結果的に総広告費が伸びるのです。」(エフエム東京後藤社長)
・新規参入をうながして国民の選択の幅を広げるのか、既存の放送局の権利を守る立場に立つか。
・新聞社とテレビ局の資本が一体化したことの弊害は、「メディア界の実態がほとんど国民に知らされることなく、メディア間の相互批判がないことで健全な発展が阻害されてきた」
・「日本では、新聞社が放送局を事実上握っている上、新聞社の系列局下にあるキー局に、無条件でBS波を与えたことをアメなら、無理矢理のデジタル化はムチである。アメとムチに操られて、放送はジャーナリズムの本質を貫くべき新聞が、この無謀なデジタル化を批判する記事を載せないのでは、視聴者は具体的な中身を知ることが出来ない」
・テレビ、新聞、広告代理店。みんなで作る護送船団に対する批判や論評、あるいは挑戦は無視するか排除する。
・「HDD搭載型DVDレコーダー利用者の過半数が、CMの8割をスキップしている。これで05年の企業テレビ広告費の2.5%が無意味化し、その損失額は約40億円に上る」
松下電器はテレビCMを自粛して石油ファンヒーター回収の広報しか流さなかったにもかかわらず、主力製品のプラズマテレビが過去最高の売上を記録した。テレビCMなしで商品が売れることが実証された。

産経新聞の実験
・夕刊廃止
・ハイクオリティ・ロープライスの新朝刊を発行。月決め定価を900円値下げ
・駅売り定価を10円値下げして100円にする「ワンコイン作戦」
・中曽根元首相を会長に、応援団「ウェーブ産経」を発足
・スヌーピーをイメージキャラクターにしたテレビCMに、年間12億円投入
・休刊日にスポーツ紙と同じように新聞を発行し、駅売店やコンビニで販売

携帯電話を保有する世帯は、全体の91.1%
「通信、情報関連支出にいくらまで使いますか」2万円以下

アクセス至上主義と新聞至上主義は似ている

新聞経営の柱となるためには、数百億円単位の売上が必要

「インターネットの玉手箱を開けてしまった国民に、昔に帰れとか情報に金を払えというのは不可能」MSNBCディーン・ライト社長

IT時代は時間の制約がなくなり、24時間対応が可能。スペースの制約もなくなり、1時間ごとに百科事典分の情報を送信することだって可能。

「全てのニュースの素材はナマの形で提供し、どう選択し、消費するかは読者にまかせればいい」

メディアという言葉は本来、「あいだ、仲介するもの」

関心あるものをじっくり読むという人間の行動は、変わらないだろう

「日本で、世界でいま何が起きているのか。時代にどのような意味を持つのか、自分の生活にどんな影響を与えるのか」という「知」への欲求は変わらない

【感想】
・新聞社が極めて厳しい状況にあることがわかった
・元々の売上規模が桁外れに大きいためネットビジネスに対して本気になれない
・アクセス至上主義から脱却するにはどうすべきかは大きな課題
・「一局が24時間の中で多様性を詰め込もうとするか、多チャンネルの中に多様性を実現するか」とあるが、実際に受け手にとって受け入れられるものはどちらなのか

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